むし歯治療について
ごく初期の段階を過ぎてしまうと悪化の一途をたどります。そして、歯は一度悪くなってしまうと、もとの状態には戻らないという認識が大切です。
初期の段階であれば、しっかりした処置をすることで歯を削らずに再石灰化させることができます。
むし歯が進行してしまった場合は、歯科医院でしっかりした治療を行っていきましょう。
痛みの少ない治療を目指し実践しています
むし歯治療が怖い・・・と歯医者さんを遠ざけてしまう方は、治療が苦手、治療の前の注射が苦手、怖いといったイメージがおありではないですか?
当院では表面麻酔や痛みの少ない麻酔の打ち方など、いくつかの方法を組み合わせて、なるべく痛みの少ないむし歯治療を目指しています。
- 表面麻酔の使用
- 麻酔注射を打つ際も、事前に打つ箇所に表面麻酔を行っています。ジェル状やスプレー状の薬など複数準備しております。また、お子さんの場合は甘い味のするお薬も準備してあります。
- 細い針の使用
- 麻酔の注射を打つ際は、痛みを少ない・感じにくい細めの注射針を使用しております。
一気に行うのでは無く、緩やかに麻酔のお薬を注射することで痛みを抑える効果があります。
むし歯の原因
むし歯は以下の4つの要因がすべて重なったときに、発生すると言われています。
- むし歯菌の数
- 歯や唾液の質
- 食事の内容(糖分の量など)
- 上記①~③の状態が継続した時間
プラークに含まれる細菌(ミュータンス菌)は糖分やタンパク質を分解します。それによって排出される酸などが、歯のエナメル質やカルシウム、リンなどの成分を溶かしてむし歯を作ります。
むし歯の進行度と治療方法
CO要観察歯
「脱灰」と呼ばれている状態です。細菌の排出した酸によって、歯の表面がわずかに溶けています。COの段階であれば、正しいブラッシングと歯科医院での定期的なメインテナンス、フッ素塗布などを丁寧に続けることで削ることは無い状態です。お子さまの場合で、歯の溝が深い箇所の場合は、シーラント処置を行うことで予防していきます。歯を削ることもありませんので、ご安心ください。
C1初期のむし歯
むし歯がエナメル質にまで進行した状態です。痛みなどの自覚症状はまだありません。患者さんによってはしみる症状が出る方もいます。初期で進行の無いむし歯の場合は、エナメルの再石灰化を期待できます。口腔清掃の状態をチェックしながら、削らずに、定期的なメインテナンスをしていくケースも多いです。
C2歯の内部まで進行したむし歯
むし歯がエナメル質の奥にある象牙質にまで進行した状態です。象牙質が軟化し、痛みを自覚する方が多いです。治療法としては、むし歯の部分を削った後、大きさによって歯科用プラスチックを充填したり、詰め物や被せ物で歯の機能を補っていきます。
C3神経まで進行したむし歯
C4歯の根(歯質)が失われた歯
歯茎から上の部分がほとんど溶けてしまっている状態です。神経も壊死して、痛みが収まっていることもあります。しかし、細菌自体は残っているため、早急に根管治療が必要になります。しかし、歯茎の下で深く進行していると、治療出来ず抜歯になる事もあります。特殊な方法として、意図的に歯を移動させたり(歯牙挺出)、周囲の骨や歯肉をトリミング(歯周外科手術)を行う事で、歯を残せる場合もあります。
歯周病ってどんな病気?
進行の早い特殊な歯周病を除いて、一般的な歯周病は数年かけて進行します。初期段階にはあまり自覚症状がなく、徐々に歯肉の腫れや出血などの症状が出てくるため最初は見過ごされることが多い病気です。歯周病は、進行し重症化すると歯を支える歯槽骨を溶かし、最終的には歯が抜けてしまいます。
もし、歯肉の色が赤くなる・腫れる・出血する、口臭などがあるなら、それは歯周病のサインかもしれません。歯周病は治療せずに悪化させると、歯を支える組織を、歯を失うことにもつながる病気です。しっかり理解して早めの治療や予防につなげましょう。
歯周病の原因
また「口腔内の環境」や「生活習慣」の中には間接的に歯周病を悪化させるリスクファクター(危険因子)が潜んでいます。歯周病が生活習慣病の一つといわれるのはそのためです。
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局所的なリスクファクター
- 歯石・歯並び・不適合な詰め物、義歯
- 口腔習癖(口呼吸や、歯ぎしり・食いしばり)
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全身的なリスクファクター(生活習慣など)
- 不規則な生活習慣・食生活・ストレス
- 喫煙習慣
- 遺伝・女性ホルモンの影響・肥満
歯周病と全身疾患の関係性
最近の研究で、歯周病は大切な歯を奪ってしまうだけでなく、歯周病およびその原因である歯周病細菌が、心臓病や肺炎などの全身の疾患と関係があることがわかってきました。歯周病細菌が血液を通じて全身をめぐり、さまざまなトラブルを引き起こすことがあります。
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心疾患・動脈硬化・脳血管疾患
歯周病細菌は血管を通って心臓にも達し、重篤な疾患を起こす可能性があります。細菌性心内膜炎の原因は主として口腔内に由来すると言われています。また歯周細菌が出す毒素は動脈の中で炎症を起こし、血栓を作る作用も持っており、動脈硬化や脳血管への障害への影響があります。
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呼吸器疾患
嚥下障害(ものを飲み込む時の障害)があると、口の中の細菌が誤って気管に入り肺炎が引き起こされることがあります。このようにして起きる肺炎を誤嚥性肺炎(嚥下性肺炎)と呼びます。特に高齢者では、物を飲み込む際の反射が衰えてくるため、誤嚥性肺炎を引き起こす危険性が高いことがわかっています。
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糖尿病
近年の研究で、歯周病と糖尿病が双方に悪影響を及ぼすことが分かっており深い関連性があります。歯周病の人は健康な人と比べて糖尿病の指標である「HbA1c」の値が高いというデータがあり、歯周病が悪化すると糖尿病も悪化しやすい事、また糖尿病にかかっている人は健康な人に比べて歯周病を招きやすく、重症化しやすいことが分かっています。治療には双方向からアプローチが必要で、当院では、糖尿病主治医と連携し治療を行うようにしています。
その他にも歯周病は慢性腎臓病、骨粗鬆症、関節リウマチ、早産・低体重児出産など、
様々な全身疾患と関連していることが報告されています
歯周病を痛みがないからと甘く見ず、全身の健康のためにも予防とともに早期治療に努めましょう。
歯周病の進行度と治療方法
進行01歯肉炎
歯茎だけが腫れている状態です。軽い炎症なので、痛みや違和感はほとんどありません。
歯科医院で歯周検査、ブラシ指導を受け、クリーニングや歯石除去、ブラッシングを徹底することで、健康な歯肉への改善が期待できます。
しかし、歯肉炎を放置すると「歯周炎」に移行します。
進行02軽度歯周炎
「歯磨きをすると出血が起こる」「歯茎の色が少し赤い」などの症状があります。
ただ、ほとんどの場合自覚症状がありません。
主な治療法として、歯と歯茎の間にある付着したプラークや歯石を取り除く処置(スケーリング)などを行っていきます。
もちろん進行を予防するため、歯ブラシ指導によりセルフケアの改善も欠かせません。
進行03中等度歯周炎
歯肉が赤紫色に腫れている状態です。膿が出てくることもあり、口臭がでてくるなど、はっきりとした自覚症状が出てきます。検査では歯周ポケットが深くなり、歯槽骨が溶けはじめて歯の軽い揺れが出てきます。
この段階では、歯と歯茎の間にあるプラークや歯石除去に加え、歯周ポケットの中に入り込んだバイオフィルムを取り除く処置(SRP)を加えて行っていきます。
ポケットが更に深くなると、バイオフィルムが取り切れない場合もあり外科的に歯肉を切開してクリーニングする歯周外科手術が必要な場合があります。
進行04重度歯周炎
歯肉は下がり、歯の揺れ、歯肉の腫れ、膿、出血などがあり、大量の歯石が歯根に付いている状態です。かむと痛い、歯肉が頻繁に腫れるとなどの自覚症状があります。
歯の根の先まで骨が溶けると、抜歯となってしまいます。そのまま放置すれば、自然に抜けてしまいます。
中等度から重度へ移行しつつあるケースの中には、歯肉や歯槽骨など歯周組織の回復を目指す治療(歯周再生治療)などを提案できる可能性もあります。
歯科医院で定期的なメインテナンスを
毎日のセルフケアも重要ですが、歯科クリニックでの定期的なチェックやクリーニングを受けることで、むし歯や歯周病を予防する効果は大きく高まります。
定期的にメインテナンスを受けて、むし歯・歯周病になりにくいお口の中の環境を整えていきましょう。
根管治療について
「根管の中を洗浄、消毒し無菌的に封鎖をする」ことが根管治療の目的ですが、根管は複雑な形態をしていることが多く、丁寧な診断と治療が必要です。
また、もう一つ重要なのは「最後まできっちりと治療を終えること」です。
根管治療はある程度の時間や通院回数が必要な事が多く、痛みが無くなった事で治療中断し、しばらくたってから悪化させてしまい歯科受診する方も見受けられます。修復物を入れてしっかりと治療を終え、再発予防のお口のメインテナンスしていくことが大切です。
治療方法
根管治療とは、細菌感染した根管を清掃消毒し、再度の感染を防ぐために根の中に詰め物を行う(根管充填)治療で大きく2つに分かれます。
- 抜髄治療(細菌によって歯の神経の感染を起こし、ズキズキとした痛みが持続する場合、局所麻酔下に感染歯髄を除去し、根管を清掃消毒する治療)
- 感染根管治療(歯髄が細菌感染を起こし、壊死してしまった状態の治療、以前に治療が終了したが再び感染してしまった歯への治療)
また、根管が閉鎖している、金属の土台が除去困難で根管治療が出来ない場合や、繰り返しの根管治療で治らない場合には、歯根端切除手術を提案する場合もあります。